京都造形芸術大学では、
学長からの学生向け緊急メッセージがホームページ上に掲載されています。
(京都造形芸術大学/2011.08.11)(一部抜粋)
【Information】千住博学長 学生向け緊急メッセージ
学生諸君、緊急メッセージ
東北で震災があり、日本全体が大きくゆれ動いています。原発の解決は全く見通しが立ちませんが、人々の暮しの立て直しの作業は何とか始まった様です。
そのなか、この度、女川町に仮設住宅の町を、世界的建築家で京都造形芸術大学教授(2011年10月1日着任予定)の坂茂さんが設計される事になりました。工事は8月下旬から始まります。
ここには189戸の住宅ができ、多くの人々が暮らすコミュニティーが誕生する事になります。
私がアトリエ兼ギャラリーを、秋元康副学長が、仮設住宅で一番必要と考えられていた温泉公衆浴場(秋元記念bath、略してAKBath)を、そして坂本龍一さんが児童図書館を、それぞれ資金を集めて寄付します。
そこで学生諸君にお願いがあります。
圧倒的にボランティアが足りません。
坂さんのコンテナを改造した仮設住宅に入れる家具の製作などを通して、このプロジェクトに参加して下さい。家具製作は木の板に紙の足をはめ込んだりする作業で、決して力の必要な作業ではありません。どなたでも参加していただけます。
教職員の方もぜひ参加して下さい。
それだけではありません。
被災地の皆さんは、使い捨てのプラスティックの容器を何回も洗って食事をしています。
陶芸を専攻している学生諸君は、お皿やどんぶり等、自作の器をつくって、何枚でもいいから届けてください。そこにちょっとでも,頑張って、とか、花の絵とか描いたら、きっとすごくいい感じですね。
壁には絵一枚ありません。絵画や写真の学生諸君は、壁に掛ける作品を作ってください。タペストリーや染色などの壁面展示作品も部屋を暖かくしてくれると思いますね。
エプロンも、よだれかけも必要です。どこかで買って来るのではなく、自分で新しく作ったアーティスティックなものがあれば、本当にすばらしいことです。
自転車も乳母車も必要です。
読む絵本もありません。手作りの絵本を作って下さい。
創作の本を書いて下さい。
商店街も出来ます。看板もポスターも必要です。
お料理教室も絵画教室もやりたい、そう思ったら何でもやろうではないですか。女川町にアトリエが完成したら、こどもたちと一緒に絵を描いたり、工作をしたりする学生も必要です。もちろん私も一緒にします。
とにかく愛情を込めて、自分の家族が暮らすと思ってください。
身の回り、全てがアートです。
学生諸君の関われる役割が必ずあるはずです。
いよいよアート作品が具体的に力になる番です。
坂茂さんは今世界で最も重要な建築家です。
神戸の震災の時、紙の教会を作って、世界的な話題になりました。検索で見てみて下さい。感動的です。
坂さんの建築は,アフリカの難民の住宅とか、世界中の被災地で実際命を救うための建築として広く知られています。坂さんの建築を見ると、私には大抵の建築家の仕事が遊びに見えます。
今一緒にニュージーランドのクライストチャーチの震災の教会の新しい設計も手がけています。これも女川のあと学生諸君に手伝って欲しいそうです。
坂さんは京都造形芸術大学の教授として、これらに諸君を引率します。
夜はここで、映画や演劇もしたいと思っています。
さまざまな講演や講義、討論会もしたいと思っています。私もします。もちろん諸君の展覧会もしたいと思っています。
この夏を利用して、本当のアーティストとしての人生のスタートになる日々を過ごして下さい。
もちろん、言うまでもないですが、違う学校の友達や、卒業生にもどんどん声をかけて下さい。
よし、やろう、勇気を出してその決断をしたら、大学事務局に窓口を開設しますから、一人でも、グループでもかまいませんからぜひ参加して下さい。
諸君の賛同を待っています。今何より大切な事は、自分の得意なことを通して誰かを助ける事が実際出来る、その経験です。その経験があれば、諸君はアーティストとして世界で生きていけます。
京都造形芸術大学は、震災に負けない明日の日本を作る、その実践に今動き出します。
京都造形芸術大学学長 千住博
大学の特徴を活かしたボランティア活動ってよいものですね